「美守の都 ふじのみや」〜曲作り〜

富士宮市のシティプロモーションCD「美守の都 ふじのみや」
制作までの色々なことをブログに綴っていますが、今回は曲作りについて。

なんやかんや1年以上の構想期間を経て
豊かな自然、水、風景、人、神、心、富士山
富士宮をイメージする大切な要素が段々とまとまってきました。

そこからは、ふと浮かんだフレーズをただただスマートフォンに録音してました。
ピアノの練習中に突然浮かんだものなど、とにかく、良し悪しの判断をつけず思ったままに。

もう数は覚えていませんが、録音した曲は大小おそらく30曲以上。
そこからイメージごとに分けて、改めて聴き直し、精査する作業に。
良いフレーズを組み合わせたり、そこからさらに発展させたり…
という作業を繰り返して、少しずつ1曲に仕上げていきました。

自宅だけでは煮詰まってしまう…という時もあって
軽井沢に作曲合宿と篭りにいったことも。

小さなキーボードを持ってこんな部屋に泊まっておりました。
部屋にいる時間が長いのでなるべく窓が大きい場所が良いなあと。
以前の私はそんな贅沢なこと…とためらってしまうタイプでしたが
自分を大切にする時間を作ることができるようになり、これは大きな進歩かなと思っています。
二泊三日の滞在、でも、その時間だけでは全曲はできず…

一体、曲を作っている人はどのくらい、時間をかけるんだろう…
どうやって曲を作るのだろう…

生みの苦しみというのもあるんですね。
今まであまり考えたことがない素朴な疑問が湧いてきました。

そんな時にふと思ったのが美術館で見たマティスの絵。
制作過程の絵が展示されていて、完成までにどれだけ試行錯誤したかがわかります。
自分と比べるのは恐れ多いけれど、作品を完成させるまでの過程を知るのはエネルギーをもらったような気持ちになりました。

今回、一番、苦戦したのは富士山組曲。
富士山という存在はあまりに大きすぎます。
悩んだ末、日々、富士山と一緒に暮らしている人だからこそ感じることができる
様々な富士山の表情…それなら形にできると思いました。
富士山を見ながら育った私なりの表現ができる
そう思い、霞富士、笠富士、赤富士、霊峰富士の四つの曲からなら組曲を作ることに決めました。

出来ることなら、オーケストラのような壮大なサウンドにしたかったのですが
今回の予算では無理…ということで
ピアノとチェロを軸にすることにしました。

霞富士はうららかな春の富士山。
より女性らしく感じ、わらべうたが聞こえるような、鳥のさえずりが聞こえるようなイメージに。

笠富士は可愛らしい富士山。
刻々と形をかえる雲との組み合わせも美しい風景です。
実は笠富士だけでなく色んな雲の名前が富士山にはついています。

赤富士は紅富士とも呼ばれ、朝焼けや夕焼けに赤く燃える富士山の姿
葛飾北斎など多くの画家が赤富士を描いていますが
時系列に表現できるのは音楽ならでは。
一年でも数度しかみれない美しく燃える富士山。
それは一瞬のようで、時がとまったような不思議な感覚になります。
太陽とともに富士山がドラマチックに変化する姿を想像してみました。

中でも一番、悩んだのが霊峰富士。
真っ白い雪が積もった雄大で男性らしい富士山です。
私自身、爽やかな透明感のある音楽…が好き
というか、自然に出てくる音楽がそうだったりします。

霊峰となると、もっと、荘厳な響きや強さが必要。
今まで作ったことがないタイプの曲だったので
ストラヴィンスキーやラフマニノフ、ワーグナーなどなど
クラシックを参考にして作りました。

また、この曲は法螺貝を入れたいとずっと思っていました。
富士山信仰を感じるような、より日本的な世界にしたかったのです。
大晦日に村山浅間神社に行ったのは
実際に生で法螺貝の音色を聞くため。

そして、チェロを2台重ねて、より荘厳さを感じられるようにしました。
この曲はいつか2チェロで演奏したいと思っています。

1曲に仕上げることと、どんな楽器を使うか…
というのは、今回かなり悩みましたが
インディアンフルートを入れたり、それぞれ個性のある楽曲にできたかなと思っています。

次回はレコーディングのお話をしたいと思います。